一冊の本から始まる旅。ET的ブックスケッチ『場所はいつも旅先だった』編

旅のキーワードは「カフェと本屋」

「予定はなんとなくあるけれど、別に決めてはいないんだ。もしその街が気に入れば長くいるだろうし、一日で移動してしまうときもある。まるっきり気の向くまま。でも、カフェと本屋は僕の旅のキーワードなんだ……」――『場所はいつも旅先だった』(松浦弥太郎/集英社新書)より

旅好きな人には多かれ少なかれ、「旅のキーワード」があるはず。

旅先のアートと出会うのが楽しみという人もいれば、海や山など自然と触れ合うのはマストという人もいるでしょう。
ご当地グルメや名酒を必ずチェックするという旅人も、きっと多いのでは?

元「暮らしの手帖」編集長で、中目黒の書店「COW BOOKS」代表、文筆家の松浦弥太郎さん。

10代の頃から旅に出てきた松浦さんのキーワードは、「カフェと本屋」だと言います。

場所はいつも旅先だった』は、松浦さん自身の旅の記録を集めたエッセイ集。

高校をドロップし、松浦さんが一人でアメリカを旅したのが18歳のとき。それは「自分探しの旅」と安易に呼べるようなものではなく、言葉も通じず知り合いもいない中、孤独で寂しいものだったと言います。

 

おいしいコーヒーで朝をはじめ、
お目当ての本を探して街をぶらり

それでも、新たな出会いをもたらしてくれる「旅」に魅了された松浦さんが、旅先で本拠地にするのが「カフェと本屋」。

旅に出ると、街を歩き回ってモーニングがおいしいカフェを探す。
ドーナツやサンドイッチ、ピザとコーヒーで朝をはじめ、店員と言葉を交わすようになる。
お目当ての本を探すうちトラブルに巻き込まれ、謎の組織「ニューヨーク・ブックハンターズ・クラブ」の手引きにより、老舗古書店で運命の出会いをする……。

僕が選んだ本を見た店主は、「いい本を選んだな」とつぶやいた。そしてひとつひとつ青い紙に包まれたキャンディを、テーブルに置かれた皿からひとつかみして、僕の胸ポケットに押し込んで「ボン・ボヤージュ」とつぶやいた。――『場所はいつも旅先だった』より

 

ページをめくるとコーヒーと古本の香りが立ち上ってくるような、瑞々しいエッセイたち。

読み終わったら本をそのままポケットに入れて、ふらりと旅に出たくなるはずです。

WRITTEN BY

梅津 奏

Kana Umetsu

他の記事を読む
  • TOP
  • LIFESTYLE & CULTURE
  • 一冊の本から始まる旅。ET的ブックスケッチ『場所はいつも旅先だった』編

  • TOP
  • LIFESTYLE & CULTURE
  • 一冊の本から始まる旅。ET的ブックスケッチ『場所はいつも旅先だった』編