スクリーンから始まる旅。ET的シネマトラベル『パスト ライブス/再会』編
すべての大人におすすめしたい、静謐で豊かな作品
この春見るべき、上質な映画が到着した。
タイトルは『パスト ライブス/再会』。
セリーヌ・ソンが初長編映画監督を務めることにも注目が集まる話題作で、第96回アカデミー賞の作品賞と脚本賞の2部門にノミネートされたほか、サンダンス映画祭や他の海外著名映画祭でも高い評価を受けているこちらの作品。
初恋の二人が24年の時を経て再会する7日間の様子を描いたこの内容は、二人に近しい年代になった私たちだからこそ、いま観ておきたい。
ノラ(ナヨン)とヘソン、初恋のゆくえは?
上昇志向が強く泣き虫のナヨンと、幼なじみのヘソン。ふたりはテストの順位を競い合う仲ながら、お互いに恋心を抱いていた。
しかし、ナヨンは家族の移住によって韓国を去ることに。イングリッシュネームの「ノラ」という名前を手に入れたナヨンは、次第に韓国で過ごした時間のことを忘れていく。
それから12年後、「ノラ」とヘソンはひょんなことからオンラインで再会し、お互いに思いを募らせる。
しかし、ニューヨークで大成したいノラは一方的に別れを告げる。
次にふたりの物語が交わるのは、さらに12年後。作家のアーサーと結婚してニューヨークに住むノラを、ヘソンが訪れる。
止まっていた時計の針が、マンハッタンの回転木馬とともにゆっくりと動き始めるーー。
作品の見どころは?
1. キーワードは、“縁(イニョン)”
作品を読み解くキーワードは、韓国で「運命」を意味する “縁(イニョン)”。24年間、途切れながらも続いてきたノラとヘソンの “縁(イニョン)”は、どこへ向かうのだろうか?
泣き虫だった過去を封印し、故郷を離れキャリアを重ねてきたノラの心情の変化にも注目したい。
2. A24(『ミッドサマー』)とCJ ENM(『愛の不時着』)のタッグにも注目
他に注目すべきは、A24とCJ ENMの初共同製作作品だという点。
A24は『ムーンライト』(2016)、『ミッドサマー』(2019)、『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(2022)など、芸術性と作家性を携えた数々の映画を世に送り出してきた。
CJ ENMは『パラサイト 半地下の家族』(2019)の配給から、Netflixドラマ『愛の不時着』(2020)や、『サイコだけど大丈夫』(2020)を手掛ける韓国のヒットメーカー。
これらの作品に魅了されたことのある方なら、間違いなく本作も特別な一作となるはず。
「選ばなかった未来」を越えて今を生きる、すべての人へ
どの仕事を選ぶのか、誰の手を取るのか、あるいは取らないのか...。
年を重ねるとは、恋愛に限らず「選ばなかった未来」の数が増えていくということ。豊かな行間が紡ぐノラとヘソンの物語は、どこか自分の人生と共鳴すると感じる方も多いはず。
普遍的な主題を中心に据えながらも静謐な映像美で魅せる本作は現在公開中。
ぜひ本作の魅力を劇場で確かめてみて。
INFORMATION
『パスト ライブス/再会』
ソウルに暮らす12歳の少女ノラと少年ヘソン。ふたりはお互いに恋心を抱いていたが、ノラの海外移住により離れ離れになってしまう。12年後、24歳になり、ニューヨークとソウルでそれぞれの人生を歩んでいたふたりは、オンラインで再会を果たし、お互いを想いながらもすれ違ってしまう。そして12年後の36歳、ノラは作家のアーサーと結婚していた。ヘソンはそのことを知りながらも、ノラに会うためにニューヨークを訪れる。24年ぶりにやっとめぐり逢えたふたりの再会の7日間。ふたりが選ぶ、運命とはーー。
監督/脚本:セリーヌ・ソン
出演:グレタ・リー、ユ・テオ、ジョン・マガロ
提供:ハピネットファントム・スタジオ、KDDI
配給:ハピネットファントム・スタジオ
Copyright 2022 © Twenty Years Rights LLC. All Rights Reserved
公式サイト:https://happinet-phantom.com/pastlives
公式X:@pastlives_j
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