鮮やかで自由な、驚きに満ちた“部屋”。東京・六本木【国立新美術館】ピカソ meets ポール・スミス 遊び心の冒険へ

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ポール・スミスの視点を通し、ピカソを再発見する旅へ

20世紀を代表する画家パブロ・ピカソ(1881-1973)の作品たちと、英国人デザイナー、ポール・スミスが出逢ったら?

ピカソの作品に着想を得てポール・スミス氏が会場のレイアウトを考案したという、かつてない展覧会「ピカソ meets ポール・スミス 遊び心の冒険へ」が、東京・六本木の【国立新美術館】で開催中。

2023年にパリで開催されたピカソ没後50周年記念の特別展「ピカソ・セレブレーション:コレクションに新たな光を!」を基にした国際巡回展です。

異なる表情を魅せる16の“部屋”
特に見逃せない作品やセクションは?

「ピカソ meets ポール・スミス 遊び心の冒険へ」国立新美術館 2026年 展示風景

展示は、パリ国立ピカソ美術館が所蔵する約80点の作品を、初期から晩年まで緩やかな時系列で辿る構成。

展示室は00から15までの全16セクションで、複数のセクションをシームレスに行き来できるようなユニークなつくり。

まるでポール・スミス氏の部屋に足を踏み入れたような錯覚を覚える展示室には、それぞれ全く異なる意匠が施されています。

なかでも見逃せない作品やセクションを、ピックアップしてご紹介。

 

《ピカソのデッサンが付された『ヴォーグ・パリ』1951年5月号の誌面》

幼い頃から雑誌や書物に親しみ、やがてページの上に直接ペンを走らせるようになったというピカソ。

01セクションでは、1951年の雑誌『ヴォーグ・パリ』に描き込まれた数々のデッサンがページごと飾られています。

ドレス姿の女性のショットに描き込まれた、シュールでどこか不穏なエッセンス。
ヴォーグの表紙が幾重にも連なる壁紙を背景に放つ、不思議な魅力に没入して。

 

《胸像(アヴィニョンの娘たちのための習作)》1907年春

1907年の大作《アヴィニョンの娘たち》のために制作された習作たちが並ぶ03セクション。

イベリア美術やアフリカ彫刻に着想を得て発展していく、後のキュビスムでも基調となるバラ色を強調した壁面が印象的。

一つひとつの習作から、形と空間をそぎ落とす実験を重ねたピカソの思考が垣間見えます。

 

「ピカソ meets ポール・スミス 遊び心の冒険へ」国立新美術館 2026年 展示風景

05セクションのテーマは、木や大理石に似た壁紙をカンヴァスに貼り付ける「コラージュ」と、スプーンや自転車のサドルなどの日用品で作られた「アッサンブラージュ」。

日用品を実践に組み込み、芸術は忠実に現実を再現するものだという規範に対抗しようとしたピカソ。

何種類もの花柄の壁紙がストライプ状に貼り合わされた室内に佇むと、この手法やピカソの思考を空間で体感できるかのよう。

 

《アルルカンに扮したパウロ》1924年

「子ども時代」と冠された07セクションのなかでも一際目を惹くのが、道化師「アルルカン」の衣装を纏った息子・パウロを描いた作品。

生まれ故郷・スペインの闘牛やフラメンコ、パリのキャバレーやサーカスなど、舞台芸術への関心を感じさせるとともに、父としてのピカソの眼差しも覗けそう。

壁にも大胆にあしらわれたブルーとイエローが織りなすパターンを眺めていると、ピカソの卓越した色彩感覚に改めて感嘆します。

 

「ピカソ meets ポール・スミス 遊び心の冒険へ」国立新美術館 2026年 展示風景(《ラ・タウロマキア(闘牛術)のための挿画》1957年5月)

鮮烈な赤で埋め尽くされた08セクションのテーマは、ピカソが生涯にわたって向き合い続けたテーマ「闘牛」。

特に「ラ・タウロマキア(闘牛術)」のための一連の版画群から感じられるのは、ピカソの類稀な観察眼、そして生と死への意識。

ポップでユニーク、カラフルというイメージに留まらない、ピカソの深い一面を目に焼き付けたい一角です。

 

《読書》1932年1月2日

ストライプという実験的なモチーフを取り入れた、ピカソが愛する女性たちの肖像を集めた09セクション。

いかにもポール・スミスらしい、ハンドペインティングされたカラフルなストライプの壁とピカソの世界観が、見事に響き合う空間。

前衛的でありながら柔らかくあたたか、そしてどこか官能的なムードが漂う女性たちの姿は、圧倒的な存在感を示しています。

 

《草上の昼食:片腕に寄りかかり座る男》1962年8月26日

12セクションのテーマは、エドゥアール・マネの絵画《草上の昼食》(1863年)の古典的な構図を解体し、ディテールを大胆に変容させる「再解釈」のために取り組んだ連作。

床にはアーティフィシャルグリーンが敷き詰められ、明るさを落とした展示室。一歩足を踏み入れると、《草上の昼食》の世界に迷い込んだと錯覚させるような演出は見事。

絵画作品だけでなく、後に巨大な彫刻作品へと結実する厚紙の模型の展示も。自身の芸術を追求しようとした過程を追えるような展示が印象的。

 

「ピカソ meets ポール・スミス 遊び心の冒険へ」国立新美術館 2026年 展示風景

晩年の作品がキッチュなストライプの壁に並ぶ14セクションを経て、ラストの15セクションではピカソの芸術家人生を語る上で欠かせない「展覧会」のポスターにフォーカス。

世界各地で開催されたピカソ展のポスターがびっしりと貼り重ねられた展示室は、そのものがコラージュ作品のよう。

ピカソの膨大なエネルギーを象徴するかのような空間で、時代や国を超えて世界中を巡ってきたピカソと彼の作品たちに想いを馳せたくなります。

 

この“遊び心”を自宅にも。鑑賞後はミュージアムショップへ


鑑賞後には、ミュージアムショップへ立ち寄ることも忘れずに。

図録は今回の展示を追体験できるようなユニークでポップなつくりになっており、解説も充実。定番のポストカードもバリエーション豊かです。

ほかに、ポール・スミスとのコラボグッズも展開。展覧会の色彩をそのまま持ち帰り、自宅でもその記憶を楽しんで。

 

色鮮やかさと楽しい驚きに満ちたピカソの作品と、それに呼応するようにポール・スミス氏の自由な発想で創り上げられた会場。

一室ごとに装いを変えていくようなポール・スミス氏の演出を通して、ピカソというひとりの画家がたどった長い旅路を歩いてみてはいかがでしょうか。

※作品の作者はすべてパブロ・ピカソ、所蔵先はパリ国立ピカソ美術館

 

 

WRITTEN BY

新井 美由紀

Miyuki Arai

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