描くことへの問い。見つめることの意味。【WHAT MUSEUM】諏訪敦|きみはうつくしい

LIFESTYLE & CULTURE
Share

約3年ぶりとなる、リアリズム画家・諏訪敦の大規模個展


注目のリアリズム画家、諏訪敦(すわあつし)氏の約3年ぶりとなる大規模個展「諏訪敦|きみはうつくしい」が、寺田倉庫が運営する【WHAT MUSEUM(ワットミュージアム)】にて開催中。

過去の代表作から新作まで、5つのテーマで分けられた展示室に約80点もの作品が並びます。

制作活動を通じて変化を遂げたテーマ、そして画家の想いとは?

シニカルな面が垣間見える初期の傑作


「美しいだけの国 ver.2」2015-2016

初期の傑作が並ぶ、2011年の個展タイトル「どうせなにもみえない」が冠された第1章。

ヌードと植物、頭蓋骨を組み合わせた人物や、豆腐などの脆く壊れやすい静物など、どれも驚くほどの精緻さ。

 


「Untitled」2007

「どうせなにもみえない」というタイトルから感じられるのは、写実を追求し尽くしても本質には触れられないという虚構性。
それでも、目に見えない内面を描こうとする画家のシニカルな一面が垣間見えます。

続く第2章「喪失を描く」に集うのは、亡き人々を遺族からの依頼で描いた肖像画の数々。対象者の家族をデッサンしたり似た骨格のモデルの胴体を石膏で型取りしたりと、ひとりの肖像画のために注がれた深いまなざしに敬服。

家族との対峙が、心象の変化へ


「依代」2017

そんな「人」とその「命」に向き合う制作の対象は、画家自身の家族にも。
第3章「横たえる」に並ぶのは、画家自身の家族を見つめた作品たち。

「依代」は、父が手記に遺したハルビンの難民収容所で病死した祖母を描いたもの。
会ったことない血縁の個人と、絵画を通じて出会うという新たな領域へ。

 


「mother / 7 DEC 2024」2024

そして画家にとって大きな転機になったのが、2024年末に迎えた母の看取り。

介護を経て母の最期の姿を描くことが、「人」を“対象物化”して描くことへの罪悪感へつながってしまったと語ります。

罪悪感を救った「静物画」


「むべなるかな」2024-2025

「人間を描きたいという気持ちを失ってしまった」と振り返る諏訪氏の制作軸は静物画へ。

第4章「語り出さないのか」の作品たちに描かれているのは、動物の頭蓋骨や草花、豆腐、蚕、タロ芋などのモチーフ。

 

展示室には、アトリエでイーゼルの脇に設られていたという数々のモチーフも。

「静物=死んだもの」を「生」へと転じさせようとする試みが、静物画でありながらいのちの息吹を感じる不思議な感覚をもたらします。

静物画でも肖像画でもない新境地へ


「汀にて」2025

ラストの第5章「汀にて」に展示されているのは、今回の展覧会のメインビジュアルを飾る同名の作品と、その制作過程における素描やモチーフ。

人物画への罪悪感から静物画に取り組み、たどり着いたのは静物画と人物画の間、諏訪氏がまるで“汀(みぎわ)”のようだと語る存在。


「汀にて(Bricolage)」2025

アトリエにあった古い骨格標本やプラスター、外壁充填材などでブリコラージュした人型のモチーフから感じる、静かな存在の重み。

“汀(みぎわ)”を前にすると、諏訪氏が経た自己治癒のプロセスを追体験できるような感覚に。

 

さらに今回の展示では、芥川賞作家の藤野可織が諏訪氏のアトリエをたびたび訪問し、制作されていた静物画の印象を元に書き下ろした短編小説とのコラボレーションも。来場者にはハンドアウトが配布されるので、絵画と文芸のコラボレーションにも注目を。

第1章から第5章までを鑑賞していくなかで湧き出すのは、「存在とは」「いのちとは」という自分自身への問い。自分の内にある想いや気づきをそっと見つめながら、一つひとつの作品と向き合う時間を過ごしてみては。

 

 

WRITTEN BY

新井 美由紀

Miyuki Arai

他の記事を読む
HANRO STAY
PREV
巡るアフタヌーンティー。Vol.26【ザ・プリンスギャラリー 東京紀尾井町】の『トゥインクル クリスマス アフタヌーンティー』
LIFESTYLE & CULTURE
NEXT
大切な愛猫にも上質な体験を。猫専用ホテル&サロン【SHIPPONA】という選択
TRAVEL

こちらもおすすめ

NEWS

MORE

TRAVEL

MORE

LIFESTYLE & CULTURE

MORE

FASHION & BEAUTY

MORE